平成19年4月3日
会長 加賀谷 朋彦
我が国の狭い国土事情による国民性があってか、土地の境界にまつわるトラブルは後を絶ちません。しかも境界紛争は単に物理的境界の範囲の問題に止まらず、権利意識の高まりにより日々隣接して生活する隣人相互の生活面に深く影響を及ぼし、時に人格紛争とさえ比喩されることもあり、その対立は根深いものになりがちです。
境界紛争に対して我が国の司法が用意してきた救済手段としては、重厚な「裁判制度(筆界確定訴訟・所有権確認訴訟)」や、既に昨年(平成18年)1月20日から法務局においてスタートした「筆界特定制度」があります。
「裁判制度」では、高額な訴訟費用や判決に至るまで長期の日数を要し、私達筆界の専門家である土地家屋調査士が必ずしも関与していなかったために、時に登記制度との連携がとられないことすらあります。
また「筆界特定制度」では、私達土地家屋調査士が初めて当事者的立場での申請代理人として境界紛争解決に深く関与することとなりましたが、この制度では
いわゆる「公法上の筆界」のみを扱うため、社会一般的に解決要望の高い、いわゆる「所有権界」の紛争に関しては手当がなされておらず、また行政処分性が無いことから、利用者が真に望んでいる解決を得ることが困難な場合が多く見受けられます。
栃木県土地家屋調査士会としては、これら従来の制度では十分な対応をなしえなかった点を補いつつ有機的な連携を図るために、栃木県弁護士会様の絶大なるご協力を得まして、県民皆様へのリーガルサービスの一環として、また国家資格者の社会貢献として、筆界の唯一の専門家である土地家屋調査士と法律の専門家
である弁護士相互の専門的知見を相乗的に活用し、社会的に要請の高い「土地境界及び土地所有権の範囲に関する紛争」を、感情的対立が根深いものになる前に、簡易・迅速且つ可能な限り低廉で、しかも最後は当事者が笑って握手できるよう解決の支援をし、その結果を登記制度に反映させるべく、今般「境界問題解決センターとちぎ」を設立するものであります。
時に、「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(いわゆるADR基本法)」が本年(平成19年)4月1日から施行され、ADRへの期待は国家レベルで高揚しております。更に隣接法律専門職種であります私達土地家屋調査士に対しましては、土地家屋調査士法第3条が改正され、「土地の筆界(不動産登記
法第123条第1号に規定する筆界をいう。第25条第2項において同じ。)が現地において明らかでないことを原因とする民事に関する紛争に係る民間紛争解
決手続」の代理業務(ADR代理権)が、弁護士との共同受任を条件に認められました。これを受けて当会でも法務省の認定を受けADR代理権を有するADR認定土地家屋調査士が着々と誕生しております。センターに対する代理行為についても当会のADR認定土地家屋調査士へご用命を頂けましたら幸甚の極みでございます。
県民の皆様にはセンター設立の趣旨をご理解戴きまして、広くご利用頂きますようここにお願い申し上げます。